日本付近で急激に発達する低気圧の統計的解析(その2)

吉田 聡*・遊馬 芳雄(北大院・理)

(日本気象学会2001年秋季大会B301:12.October.2001)


INDEX
1.はじめに
2.データおよび解析方法
3.解析結果
4.まとめ

  1. はじめに
  2. これまでに、1994年10月から1995年3月まで1シーズンにおける日本付近で発生発達 する爆弾低気圧について、その発生環境と発達要因についての解析を報告した (
    1999年 春季大会2000年春季大会)。 その結果、爆弾低気圧の発達には下層の傾圧域と上層のポテンシャル渦度の移流 が重要で発達位置は大規模場に大きく依存していた。 今回は解析期間を延長して4シーズンの再解析を行い、日本付近での爆弾低 気圧の特徴を調査した。

  3. データおよび解析方法
  4. データとして、気象庁提供の全球客観解析データ(GANAL)を使用した。解析期間 は1994年から1995年と1996年から1999年の4冬季間(10月から3月)である。解析領 域は東経100度から180度、北緯20度から65度である。 低気圧は12時間以上持続し、少なくとも一度中心気圧の低下が見られ たものとして定義し、さらに爆弾低気圧はその中でSanders and Gyakum(1980)の 定義によって抽出した。 また、発生位置と発達位置から日本海およびオホーツク海で発達した低気圧を Okhotsk-Japan Sea(OJ)タイプ、太平洋上で発生発達した低気圧をPacific Ocean-Ocean(PO-O)タイプ、大陸上で発生し太平洋上で発達したものをPacific Ocean-Land(PO-L)タイプ、大陸上で発生発達したものをLand-Land(L-L)タイプ、 太平洋上で発生しオホーツク海上で発達したものをOkhotsk-Ocean(O-O)タイプと して分類した。

  5. 解析結果
  6. 解析期間中、爆弾低気圧は184ケース発生し、OJタイプが33ケース、PO-Oタイプ が91ケース、PO-Lタイプが44ケース見られた。L-LタイプとO-Oタイプはそれぞれ 13ケースと3ケースであった。 そこで前回と同様発生頻度の多いOJ、PO-O、PO-Lの3つのタイプについての解析 結果を述べる。 まず
    図1に各タイプの低気圧の月別発生頻度を示す。 全体としては1月に最も発生数が多い。PO-Oタイプも同様に1月にピークを持つ。 OJタイプは11月に最も多く発生し、次いで3月に多い。一方PO-Lタイプは12月と2 月に発生数が多い。 これから爆弾低気圧の発生に季節依存性があることが示唆される。 次に、最大発達した時刻におけるコンポジット解析を400hPa面と850hPa面に関し て行った。 その結果の概略図を図2に示す。 上層のトラフがそれぞれの発達位置の北西部に位置し、それに伴った ポテンシャル渦度の正のアノマリがある。 一方、下層の総観場にも特徴が見られ、OJタイプはオホーツク海に、PO-Oタイプ とPO-Lタイプはベーリング海上に低気圧が存在し、PO-OタイプはPO-Lタイプに比 べて強い。 また、この低気圧に伴う傾圧域が各タイプの発達位置に形成されていた。 これらの特徴的な環境場は大陸の寒気の張り出しの季節変動と一致しており、各 タイプの発生頻度の季節変化が環境場の変動の影響であることが示唆された。

  7. まとめ
  8. 日本付近で発達する爆弾低気圧について4冬季間の客観解析データを用いて統計 的な解析を行った。 その結果、爆弾低気圧の発生位置、発達位置は季節によって異なり、それは大規 模場の季節変動の影響によることが示された。
図1 爆弾低気圧の月別発生頻度.
図2 各タイプの発達環境の概略図.