日本付近で急激に発達する低気圧の発達要因

吉田 聡*・遊馬 芳雄(北大院・理)

(日本気象学会2000年春季大会P344:26.May.2000)


INDEX
1.はじめに
2.データと解析手法
3.解析結果
4.まとめ

  1. はじめに
  2. 日本付近で急激に発達する爆弾低気圧は、これまでの研究から発生・発達 位置、移動経路から「OKHOTSK-JAPAN SEA」(OJ)タイプと「PACIFIC OCEAN」 (PO)タイプに分類でき、発達環境や発生時期に特徴があることを1999年春 季大会P375で報告した。 今回はさらに「PACIFIC OCEAN」タイプを大陸起源の「PACIFIC OCEAN(LAND)」(POL)タイプと海洋起源の「PACIFIC OCEAN(OCEAN)」(POO) タイプとに細分した。 それぞれ3つのタイプの典型例について、Zwack and Okossi(1986)の発達 方程式(以下Z-O86)を使って、発達に寄与する要因について解析した。

  3. データと解析方法
  4. データとして気象庁全球客観解析データ(GANAL)を使用した。 任意の地点における12時間の地表気圧変化ΔPは、Z-O86による地衡風 相対渦度の時間変化と静水圧平衡から以下のように表される。

    ΔP = 〈VADV〉+〈TADV〉+〈LATH〉+〈ADIA〉+〈RESID〉

    ここで、VADVは渦度移流項、TADVは温度移流項、LATHは潜熱放出項、 ADIAは断熱冷却項、RESIDは残差で〈 〉は鉛直積算を表す。 この関係を用いて、12時間毎の低気圧中心での気圧変化に対する各項の 寄与を見積もった。

  5. 解析結果
  6. 解析した3つの事例の発生、最大発達日時と最大発達率を表1 に、その間の移動経路を図1に示す。 まずOJタイプの解析結果を図2に示す。 最大発達の12時間前には渦度移流項が気圧変化の3分の2を占めてい たが、最大発達時には温度移流項が増加し渦度移流と同等の寄与をして いた。次にPOOタイプの気圧変化を図3に示す。 渦度移流項と温度移流項がともに最大発達時に増加して、急激な発達を 引き起こしていた。 一方、図4に示したPOLタイプの気圧変化は、渦度移流項が12時 間前も最大発達時もその発達を支配している。 さらに、各項の鉛直分布(図省略)から渦度移流は上層の寄与が、温 度移流は下層の寄与が大きかったことがわかった。 以上の結果から、OJタイプは下層の傾圧性によって急激な発達を起こし、 POOタイプは上層の渦度と下層の傾圧性の相互作用により、POLタイプは 上層の渦度の移流によって急発達していたことが示唆された。

  7. まとめ
  8. 日本付近で発達する爆弾低気圧を移動経路と発達位置で3つのタイ プに分類し、その典型的な事例について発達の要因を調べた。その結果、 それぞれのタイプによって発達要因の寄与が異なっていたことがわかった。
Type Formation date Maximum deepning date Bergeron
OJ 12UTC 01 Nov 94 00UTC 4 Nov 94 1.6
POO 00UTC 30 Dec 94 00UTC 1 Jan 95 2.7
POL 12UTC 24 Apr 94 00UTC 3 May 94 1.2
表1 解析した低気圧の発生・最大発達日時,最大発達率.
図1 OJタイプ(実線)、POOタイプ(破線)、POLタイプ(点線)の移動経路と最大発 達位置(●).×は12時間毎の位置.
図2 OJタイプの低気圧の最大発達12時間前と最大発達時の中心における 前12時間の気圧変化($\Delta P$)とZ-O86の各項による気圧変化.
図3 POOタイプの気圧変化.図2と同様.
図4 POLタイプの気圧変化.図2と同様.