ΔP=[ {p(t-12)-p(t)} / 12]・sin60°/ sin[ {φ(t-12)+φ(t)} / 2]
但し、φ(t)は時刻tでの低気圧の中心緯度を表す。 解析結果 解析期間中、解析領域内で30ケースの爆弾低気圧が発生した。これらを発 生・発達位置と移動経路で3つのタイプに分類した。図 1がその移動経路と最大発達位置である。 今回の解析では、オホーツク海及び日本海で発達するタイプを 「OKHOTSK-JAPAN SEA」(OJ)タイプ、太平洋上で発生、発達するタイプを 「PACIFIC OCEAN(OCEAN)」(POO)タイプ、そして、大陸上で発生し太平洋 上で発達するタイプを「PACIFIC OCEAN(LAND)」(POL)タイプと名付け、解 析を行なった。 まず、図2に各タイプの月別発生頻度分布を示す。 これを見るとOJタイプは11月に多く発生していた。 またPOOタイプは1月にピークをもち最も発生数が多かった。 一方POLタイプは発生数が最も少なく、発生時期は冬に集中していた。 また、発達率の頻度分布ではPOOタイプが最も強く、OJ、POLタイプは比較 的弱かった(図省略)。 このことから、発達位置や移動経路は発達率や発生時期と関連していると 考えられる。 次に発達に寄与する要因を調べるため、最大発達時の低気圧中心における 400hPa面の相対渦度及び地表の温度勾配と、発達率との相関図を図3に示す。 これを見ると、OJタイプでは上層の渦度とは負の相関があるが、下層の温 度勾配と正の相関が見られる。 一方、POOタイプは渦度、温度勾配共に正の相関が見られる。 また、POLタイプでは渦度と正の相関があるが温度勾配とは負の相関になっ ている。 このことから、OJタイプは下層の傾圧性、POLタイプは上層の渦度、POO タイプはその両方が急激な発達に寄与していることが示唆される。 さらに3タイプの発生環境を調べるために、各ケースの最大発達時を中心と した6日平均値のコンポジット解析を行なった(図4)。 400hPa面の渦位のコンポジットでは、OJタイプは北海道の北部に弱いアノ マリーがあるが、POOタイプでは北海道上空を中心に強い高渦位域が広がっ ている。一方POLタイプでは高渦位の中心は日本の北東側の太平洋上に分 布している。 850hPa面の相当温位のコンポジットでは、OJタイプは寒気が大陸上に分布 し、オホーツク海との境界で温度勾配が強くなっている。POOタイプでは 寒気は日本上空に大きく張り出し、傾圧域が日本の南岸に東西に分布して いる。また、POLタイプでは寒気は日本の東側に抜け発達位置における傾 圧性は弱くなっている。 以上の結果から、OJタイプが寒気の吹き出しの弱い環境において、日本海からオ ホーツク海上に伸びる傾圧域において発達することが示され、これが初冬 に発生数の多い原因と考えられる。 POOタイプは下層の寒気が大きく張り出す真冬に、日本南岸に存在する傾 圧域において発達し、上空の渦位と下層の傾圧性の両方が発達に寄与して いると考えられる。 一方、POLタイプは寒気が太平洋上に抜けた環境において発達していた。 下層の温度勾配と発達率との関係が負であることと発達域における傾圧 性の弱さを考えると、POLタイプの発達には上層の渦位が主に寄与してい ると考えられる。 まとめ 日本付近で発達する爆弾低気圧について、GANALデータを用いて統計的解 析を行なった。 その結果、発達位置、移動経路から3つのタイプに分類でき、上層の渦位 と下層の寒気分布がタイプ毎に異なっていることがわかった。 また、発達要因と考えられる上層の渦度と下層の傾圧性の寄与がそれぞれのタイ プで異なることが示唆された。